2012年7月20日金曜日

「 すいかとなみだ 」

バイト先の高校三年生の男の子が今日泣いた。

詳しいことは分からないけど、
店長と話をしていて急に泣き出した。

普段の様子からいうと泣くような子ではないのだけど。


頭の中で、胸の中で考えていることはいっぱいあったみたいで
顔を覆いながら、鼻をかみながら泣いていた。



ふと思い出したことがあった。
私も高校生のとき、親に携帯電話が欲しいと言ったら
反対されて泣いたことがあった。

その時母には、
「そんなに、泣くほど欲しいの?」
と言われたけど、反対されたことに泣いたのではなく、
親の心情をしって泣いた。その時はうまく言葉に表せなくて、

「なんかよくわかんないけど、涙が出てくるんだよ!!」

とかいって泣いていたと思うけど、
親の気持ちが大きく大きくなって自分に入ってきて
受け止めきれなくなって涙が出た。


母はこういっていた。

「携帯をもつことは、想像力が失われていくことになる。
 友達と待ち合わせをしていて、遅刻してしまう時、
 電話一本で相手に心配をかけないですむかもしれない。
 でもそれは、想像力を削られることになる。

 連絡がとれないということは、相手に何かあったのではないかと考える。
 来る途中に事故にあったのかもしれない、病気でこれなくなったのかもしれない、
 悪い人に誘拐されたかもしれない。」

他にも色々話していたけど、
私は自分が考えてもみなかった心配を母がしていたことを、
なかなか受け止めきれずにいて泣きながら聞いていた。
なので他に何を言っていたのか覚えていない。

でも、言わんとしていることは伝わった。




今日泣いていた彼も、

色んな色々があふれて泣いていたのではないかなと思った。

そして店長は、その隣でいつもとは違うやさしい顔をしていた。




今日は差し入れでまんまるのすいかをいただいた。

それを食べるころには、いつもの高校三年生の彼にもどっており、
そのすいかをみんなに切ってくれた。

半分に切って、そのまた半分に切って、

「食べやすいようにうすく切ったら?」とわたしが言うと

「景気よく食べましょうよ〜!」といつもの明るい調子で返ってきた。



お客さんの席から塩を持ってきて、
それを降りながら食べる姿はやっぱりお行儀が悪かったけど、

「おいしい?」


と聞くと、
にこっと笑ってうなずいた。


きっと今日の出来事は、
彼の心に遠くの遠い日まで残るんだと思う。


泣いたあとにすいかを食べた記憶が、
いつまでもしょっぱくて甘い記憶でありますように。



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